髪の長い女

     空の色は残酷な色
     どんなに腕を伸ばしても
     決して私のものにはならない

     海の色は哀しみの色
     掌から零れ落ちて
     二度と元には戻らない

「なんかさ、小島と話してると自分がひどくつまらない女に思えてくる」
「そうかな? 国枝さんは凄いと思うよ。頭もいいし、考え方も、何ていうか独創的で。話してて時々感心しちゃうよ」
 満面の笑みのまま、言葉を続ける。
「それとも、小川さんたちと話してる時は、特別な存在でいられるってこと? つまらない女に囲まれてれば、自分は彼女たちとは違うって感じる?」
「そんなんじゃないよ」
 悪魔みたいな奴。そんな意味で言ったんじゃないって、判ってるくせに。
 小島といると、自分は単なる恋する女になる。
 頭は働かないし、体だって、自分の思うようには動かない。
「ひどい男だね」
「まぁね」
 何でこんな奴、好きになったんだろう。

「一つ訊いてもいいかな」
 私の目を、真っ直ぐに見上げて言う。
「何を?」
「国枝さんって、小川さんと僕と、どっちが大切?」
 一瞬耳を疑う。
 みちると、この男と? どうして比べる必要があるのか。
「それって意味のある質問なの?」
「ううん、ただ聞きたいだけ」
「本当に根性曲がってるね」
「あはは。そんな風に言われると照れるな」
 誉めてないのだが。

 全く。
 何でこんな男に惚れてるんだろう。
 小さく一つ、溜息をつく。
「じゃあ答えるけど」
「うん」
「小島のことは好きだけど、みちるの方が大切」
 いくら恋愛に溺れても、長い付き合いの友人を切り捨てる程じゃない。
 これがきっと、私の砦なのだ。
「なぁんだ。僕が一番じゃないのかぁ」
 心底残念そうに小島が言う。
「なに自惚れてんのよ。小島は別に、私の彼氏じゃないでしょ」
 ただの女友達の一人なんだから。
 大勢いる彼女の一人ですらないんだから。
「まぁいいや。率直な意見をありがとね」
 猫のような笑み。

「小島は?」
「ん?」
 立ち去りかけた背中に、言葉を投げつける。
「年上の彼女と浅野と、どっちが大切なの?」
「そんなの、啓吾に決まってる」
 即答。
「僕は基本的に、恋愛より友情を重視するタイプだもん」
 全く信憑性のない台詞を、平気で口にする。
「だから、年上の彼女より、国枝さんを大事にするよ?」
 そう言って、口元を笑みの形に歪める。
 本当に、悪魔みたいな奴。


あんな番外編描かれたら、もうどうにもなりませんってば。
そんなわけで、水色×鈴ですよー。
千×雨以上にありえねぇ。
いや、千×雨は、私の中では完全にアリなのですが。
水×鈴は、さすがにマイナーな自覚はあります……。

2004/03