名前

 

   切っ先を鋭く研がれた刃ほど
   その身は薄く脆いのだ

「 八 千 流 」
 あの人の声。
 その名を呼ぶ時だけ ほんの少し優しい響きを帯びる声。

 けれど 彼が呼ぶのは あたしではないのだ。

 彼の世界は どこまでも広く 白い。
 けれど その世界の中で あたしは一歩も動けずにいる。

 あたしには 名前がないから。

 彼が名前を与えてくれたら あたしはどこへだって行けるのに。
 その名を呼んでくれるなら あたしはいくらだって強くなれるのに。

 彼は あたしがここにいることさえ知らない。

「 や ち る 」
 彼の呼びかけに 少女が笑顔で振り返る。
 どうして?

 そ の 名 は あ た し の も の な の に 。

 彼があの子を呼ぶたびに あたしの心の隅で 昏い炎が爆ぜる。

 あたしを。
 あたしの名を呼んで。

 あなたの声で。
 あなたの魂で あたしを求めて。

 嫉妬に狂って あたしがあの子を切り裂いてしまう前に。


13巻読んだら、書きたくて仕方なくなった話。
剣八の斬魄刀が好き。
名前は知らないけど、きっと彼の残魄刀は女性形だろうな、と
思ってみたり。剣八モテモテです(笑)

2004/06