飛行機雲

   永遠なんて言葉に縋らなくても
   僕らは今を生きていける


教室というやつは、何だってどこもこんなに窓が大きいのだろう。
机に頬杖をついてぼんやりと外を眺める。
こんなにも大きいものだから、どうしたって外の様子が気になってしまう。
グラウンドを走る人影とか、青空に浮かぶ雲とか、鳥の群れとか。
これでは、授業に集中できないのも無理はない。

ぼんやりとしたまま授業が終わり、チャイムの音が響く教室でゆっくりと伸びをする。
教室の風景は、尸魂界も現世もそれほど変わらない。
同じような制服を着て、真面目な顔をして机に向かって、休み時間には友人たちと笑いあって。
……笑えるようになったのは、こちらに来てからのような気がするけれど。
ガラスを透かして眺めた空を、真っ直ぐに横切る白い雲。
青空に描かれた矢印のような、あれは一体何なのだろう。
そんなことを考えていたせいで、背後に立つ気配に気付くのが、一瞬遅れた。
「何見てんだ」
そう言って横に並び窓から外を眺める、鮮やかな髪をした人影。

 あの小さな窓から、いつも思い描いていたのは。
 教室からの風景とは違う、細く切り取られた空に映していたのは。
 いつもただ、彼の姿だった気がする。

「うむ。あれは何だ?」
どれだよ、と私の指が示す空に視線を走らせて。
「あぁ。飛行機雲ってんだ」
「飛行機?」
「……そう言や尸魂界にはないもんな……」
説明の言葉を考えあぐねるように腕組みをする。
眉根を寄せた見慣れた表情に、ふと笑みが零れた。

 死神の寿命から見れば、ほんの瞬きの間。
 僅かな時間を共に過ごしただけの、人間の少年。

 それでも、記憶は些かも薄らぐことはなく、私の中に残り続けた。

「まぁいいや。そのうち乗れば判るだろ、お前も」
考えることを放棄して、彼が思案顔を笑みに切り替えた。
「それよりメシ食いに行こうぜ。ちびっこが学食のおばちゃんに囲まれて、えらいことになってる」
広い窓から視線を外し、示された教室の扉へと向き直る。
こんな日常が、永遠に続くわけではないけれど。
短い期間で環境を変える人間の生活。
戦いのために派遣された私たち。
それでも。それでも。
今またこの時に巡り合えたことに、感謝せずにはいられない。


―――ただいま。



久しぶりすぎて、小説の書き方を忘れそう……。
イチルキ、てかルキア帰還万歳SS(笑)
一護が日番谷のことを何て呼んでたのか忘れた……orz

2005/11