予独愛蓮之出淤泥而不染 濯清漣而不妖 中通外直
不蔓不枝 香遠益清 亭亭浮植 可遠観而不可褻翫焉
―――周茂叔 「愛蓮説」 汚泥のなかで独り清廉に咲く花は、
清水のなかでも美しく花開くことができるだろうか。
雛森はん。
あんた、可哀想やなぁ。雛森はん。
あんたの周りの連中、みんな死ぬで。
「藍染隊長」も「日番谷くん」も、「吉良くん」も「乱菊さん」も。
みんな、可哀想やなぁ。
あんたに関わったばっかりに、みーんな死ぬんや。
あんたが分不相応に名前を呼んだり、笑いかけたりせぇへんかったら、もっと長生き
できたかも知れへんのになぁ。
あんた、ヒドい女やなぁ。雛森はん。
それでも、何も知らんと笑顔を振り撒くんか。
全部あんたの所為やのに。
イヤな女やなぁ、雛森はん。
ボク、あんたのこと、大っ嫌いや。
「雛森ちゃん」
にこにこと、市丸隊長が手を振る。
そう言えば、あたし市丸隊長の笑顔以外の表情、見たことないわ。
彼は昔、藍染隊長と同じ隊にいたからか、よく五番隊の詰所に顔を出す。
藍染隊長と、仲良いんだなぁ。
でも基本的に市丸隊長って、誰とでも仲良いよね。人当たりいいし。
日番谷くんなんて、わりと人見知りするけど、それでも一緒にいるとこ、よく見かける
もの。
吉良くんも、市丸隊長が上官で良かったなぁ。
でもあたし、この人は何だか苦手だ。
「な、何ですか、市丸隊長」
恐る恐る近付いて尋ねると、市丸隊長は急に顔を寄せてきた。
うわわっ、近すぎですってば!
「なぁ雛森ちゃん、ボクのこと好き?」
「ええぇぇえぇっ!?」
そないに驚かんでも、と肩を落として顔を引く。
驚きますよっ。
だって市丸隊長、絶対あたしのこと嫌いですもん。
そりゃ、自分の後に藍染隊長の下についたのが、こんな不甲斐ない小娘じゃ、気に
食わないのも仕方ないけど。
「い、い、いきなり何ですか!?」
「何て? ちょっと訊いただけやん」
市丸隊長は、瀞霊廷内の女の子たちに、すごーく人気がある。
いつもにこにこしてるし、女性に優しいし、やんちゃな雰囲気も可愛いと評判だ。
でも。
でも、怖い。
こんなこと考えるのは、あたし自身が子供だからなんだろうけど、この人は子供
特有の残酷さを持っている気がするのだ。
自分より弱い存在を、平気で傷つけるような。
あぁっ、ごめんなさい、あくまであたしの勝手なイメージですっ。
本当は笑顔通りの優しい人なんだろうけど。
「あんまり雛森をからかうのはやめてくださいよ。あたしらと違って、この子純情なん
ですから」
焦るあたしを見かねて、乱菊さんが声をかけてくれた。
「なんや、小姑が出てきてしもたわ」
大仰に肩を竦めて、それでも笑みは崩さないまま。
「あ、あの……ありがとう乱菊さん」
「あんたも、こんなのの寝言は聞き流しとけばいいから」
三番隊隊長をこんなの呼ばわりして、乱菊さんが笑う。
あたしも、辛うじて頬に微笑を貼りつかせながら。
でもね。
こうして乱菊さんと話すあたしを見ている、市丸隊長の目が、もの凄く冷たいように
感じるのは、やっぱりあたしの気のせいなんだろうか。
ギンと雛森の話。
てか、一番可哀想なのは、存在すら忘れられてる恋次だと思います^^;
別にギン×雛とかじゃなくて、単にギンの周囲の人は、みんな雛森が好きだなぁ、という話。
2004/06
前文追加。
漢詩部分は「愛蓮説」より一部引用。
この詩は初読のときにちょこっとむかついたのですが。
自分だけ綺麗ならそれでいいのか。君子ってそういうものなのか、とか。
2004/07
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