ねえ、キスしてよ。

本気のキスじゃなくていいの。
別に、アナタの心が欲しい訳じゃないから。

お互いに眼鏡越しのアイコンタクト。
眼鏡がお互いの心を隠しあう、大切な砦。

戯れの恋、ってヤツかしら。
アタシは本気で恋するのが怖いの。

だって、本気を必ず受入れて貰えるなんて保証が
ないんだもの。

アナタの視線は、どこを向いているの?
眼鏡越しだから、本気が見えない。

ねえ、だから、キスをして?

少しでも、アタシの事、好き?

試す様に、確認する様に。

アタシは繰り返す。

虚しくなんて、ない。
傷つく事が一番怖い。

だから、アタシは本気になんてならない。
もう、手に入らないモノを欲するなんてしたくないから。

*
 ねえ、キスしてよ

彼女は簡単に言う。
どこまで本気か知れないのは、眼鏡越しの目がいつも
泣きそうだから。

彼女を想う気持ちが、自分の中でも整理し切れなくて、
彼女の言葉に素直に従う事ができない。

求められているのは本気なのか、その場限りの慰めなのか。

だから。

ねえ、キスをして?

唇ではなく、頬に。額に。目蓋に。髪の毛に。
ボクは、キスをする。

いつか、お互いに本気になった時。

そうしたら、その言葉に従って、戯れではない本気のキスをしよう。

*
いつだって、本気になりたいのに、お互いの砦がなかなか崩せない。

好きなのに、好きって言うのは、なんて難しい。
何よりも、自分の気持ちを確かめる事が、こんなにも
怖い事だなんて。

本気になるまで、知らなかった。

*

そんな、アタシ達の恋はスタートすらできないまま、
何かを待っていた。


***



架南様から頂きました!
一応作品交換ということで頂いた千鶴×雨竜。
架南様の文章が素晴らしすぎて等価交換にはなりませんでした。てへ。
どつきあいじゃない千雨に、ときめきが止まりません!
架南様、感謝です! むしろ愛です!